恐怖返し

 

 

朝の通勤中、歩道に並んでいる小学生の列を見ていると、わたしのなかにある嫌な記憶がニョキニョキと軽々しく動きだす

 

 

「また、思い出したわ」

 

あの記憶。

ピカピカの1年生。友達100人はできなかったけれど、初めて変な気持ちを感じることができた小学1年の春

 

 

 

わたしの自宅から学校までは片道1時間もかかっていた。小学生という小さな体で、毎日頑張って歩いた。雨の日には、靴を犠牲にした。とても無残で、びっちょりぷんぷん臭かった。

 

地区ごとに集合場所というものがあり、家の近い人がこの地点で一旦集まって、そこから集団となり学校まで行くというルールがあった

 

自宅から集合場所までは約10分で着く距離

そこまでは1人で歩いて行く

 

 

7:20 

自宅を出て、集合場所まで歩く

「学校…楽しみ!」平凡、純粋な6歳である

わたしの豊かさと春という季節が重なる

 

背が低いため、全てが大きく感じる

家の塀はでかい、電柱はでかい、犬のフンはあぶない

色々な気づきを楽しむ。わたしは住宅街をルンルンと歩く

 

 

 

前方から自転車が来ている

何も思わずわたしはただ進む

 

キキーーッッッッ!!!!

 

挨拶を交わせる程度の距離で反対側の歩道に自転車が止まった

「え?」

 

わたしとの距離は少しあるが近い

急な出来事で足を止める

何で?どうしたの? 

 

自転車に乗っていたのは知らないおじさんだった。もちろん、見たことがない。見た目は50代くらい。薄汚れた作業着のようなものに、長靴を履いている 

明らかに出勤中です、という格好だった

 

自転車を降り、こちらを見つめている

わたしも立ち止まったまま見つめ返す

 

 

カチャカチャ…

 

カチャカチャ…

 

 

 

 

おじさんが、ベルトを外し出した

 

「え?」 

驚きと、何かわからない感情

こわい?なんで?なにしたいの?

様々な思いが頭を埋めつくす

思考停止した 

 

足が動かないのだ

人間は恐怖を感じたらこうなるのだ

何もできないのだ 

 

ただ、状況をありのままに見つめる

おじさんがベルト外してる

ニヤニヤして外してる

 

 

ベルトを外したかと思うと、ズボンは下げずに、またベルトを付け直した

 

そして、何にもなかったかのように、また自転車に乗り、その場から去っていった

 

 

何がしたかったのだろう。ただただ、恐怖しかなかった

わたしは、その場でちょっぴり泣いた。そして、集合場所についたとき、めちゃくちゃ泣いた。上級生のお姉ちゃんから慰めてもらった

こんな怖くて、気持ち悪い体験は無いだろう

 

 

 

 

これ以来、あのおじさんは見かけなくなった

それはそれで、夢だったのだろうかと思ってしまうから、たまーに見かけるくらいが良かったのかなと思う。

いや、この思考は危険だな

 

ちゃんと、集団で登校することって大切だなと学んだ。

おじさんがストーカーに発展しなくてよかったと思った。

 

 

 

 

中学生になったときに、この体験を友人に話した。

何気なく、昔こわい体験したんだよ。変なおじさんがいてさー、見かけたことある?などペラペラ話した。

友人が知ってるかもしれないと言った。

まじか、あのおじさんやっぱりヤバい奴だったんだ…

 

 

 

 

 

 

「あのおじさん捕まったよ」

 

 

嘘かもしれないし、本当かもしれない

 

 

わたしは何も言うことはしない

 

ただ、わたしに恐怖を与えた人物だ。という事実はある

今頃、何やってるんかな。おじさん…

 

 

 

 

 

おじさんなにやっちゃったのかなぁ?^_^